☆嚥下障害☆

現在、日本の社会福祉は、措置制度から契約制度に転換するにあたり、社会福祉の概念もADLからQOLへと変化しつつあります。ところで、私達の人間としての生活の中で最も基本的な欲求の一つは「口から食べる」という動作であって、そこで、高齢者の場合、食事中にむせる、声がかれたようになるなど、注意して観察すると普段の食事でよく見られることがあります。そして、「口から食べる」という行為は、QOL(Quality Of Life)と深く結びつき、嚥下障害によって誤嚥がおこり、ADL(Activities of Daily Living)の低下が引き起こされるのです。

QOL(Quality Of Life)⇒ 生活の質 
生活の満足度や人生の目標など、幅広い意味で使われる。
寝たきりなどの長期療養が強いられる慢性疾患患者らにとっての生きがい、生活の目標などの意味でも用いられる。

ADL(Activities of Daily Living) ⇒ 日常生活動作
食事、排泄、着脱衣、入浴、移動、寝起きなど、日常の生活を送るために必要な基本動作すべてを指す。高齢者の身体活動能力や障害の程度をはかるための重要な指標となっている。


1 嚥下障害とは・・・                                             

食物を口腔から胃へ送り込む一連の運動を嚥下といい、通常、人間は嚥下運動と連動して、呼吸を行っている。しかし、その行為は、同一器官を共有する為、複雑な関連を持っている。この中で、疾病や老化などの原因により、これらの複雑な運動に関わる神経や筋肉に何らかの障害が生じた場合、上手く送り込むことができず嚥下障害を引き起こすのです。                           

                           

2 嚥下運動の分類                        

嚥下運動は、以下の4の段階に分けられる
@ 口腔準備期(咀嚼期)
食物を口腔内で処理して、必要なら咀嚼して飲み込みやすい物性に変える時期 
A 口腔期
舌を使って食物を後方に送り込む時期
B 咽頭期
嚥下反射が誘発されてから食塊が咽頭を通過するまで 
C 食道期
食道の蠕動運動によって食塊を胃に送り込むまで                    

                           

3 嚥下障害の症状 

嚥下障害の症状や発見の糸口としては、以下の事がある。
・飲み込むのが困難
・飲み込むときに痛みがある
・喉に詰まった感じがある
・口から食べ物がこぼれる
・口の中に食べ物が残る
・唾液が多い
・よだれがでる 
・口が乾く 
・食べ物が胸につかえる
・やせた(体重が減った)
・食べ物や胃液(酸)が口の中に戻ってきたり、吐いたりする                           

                           

4 嚥下障害の種類 

嚥下障害は口腔期障害と咽頭障害の2つに大きく分けられる。

 @ 口腔期障害
 舌の開閉、舌の動き、咀嚼に障害がある場合。
 これらに障害があると「食物が口からこぼれる」、「うまく噛むことができない」、「噛んだ 食物を飲み込める状態(食塊)にすることができない」、「喉へ送り込むことが困難」など の問題が発生する。                                                    

 A 咽頭期障害
 喉へ送り込まれた食物を上手く飲み込むことが困難な場合
 「なかなかゴックンできない」、「喉にひっかかる」、「飲み込む前や後にむせる」、
 飲み込めないために舌から食物がこぼれる」などの症状がある。
 口腔期障害と違って、目で見て確認することができないため、どの部位にどのような問題があ るかを見極めるのが難しくなる。                 

                           

5 嚥下障害の原因
 

 嚥下障害の原因としては以下の事が考えられる。
 ・脳卒中後遺症
 ・外傷性脳障害
 ・痴呆
  ・パーキンソン病
 ・ウィルソン病
  ・筋萎縮性側索硬化症
 ・多発性硬化症
  ・重症筋無力症
この中で、脳卒中が嚥下障害の原因の約40%を占めるとも言われている。 

嚥下障害の治療方法には、経管栄養法、訓練、手術といった治療方法があるが、ADLの回復という方向から見ると、訓練が最適ではないだろうか。QOLとは、環境がそこで生を営む人の人生のチャンスないし可能性(選択の幅)をどれほど広げているか(言い換えれば、どれほど自由にしているか)の評価であって、ADLの低下は、この可能性が低くなるのを招くものである。そうすると、嚥下障害が招くADLの低下は、治療の方法しだいでは回復し、QOLを向上させることができる。しかしながら、一般的には一度低下したADLを回復させるのは難しい。このなかで、嚥下障害を持つ人達を介護者や家族などが理解することで、本人のQOLを多少は高めていくことは可能かもしれない。また、嚥下障害の程度によっては、ADLは回復することも可能であるから、その時には、是非、嚥下障害の人の周りの人々は、その人が可能性を広げられるように援助してほしいものである。




※このページで述べている見解は、私個人の見解であり、他の見解を否定するものではありません。
また、ここで述べている症状は、個人的に調べて述べたものであるので、必ずしも一致するとは限りません。
症状に覚えがある方は、専門医の診断を受けることをお勧めいたします。